大判例

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鳥取地方裁判所 昭和37年(ワ)280号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕三、以上認定のとおり本件山林について、その所有者である大谷が、一方で、原告のために根抵当権を設定するとともに、別に、被告に対しその地上立木を売渡したものであるが、根抵当権者である原告が、地上立木買受人である被告に対し自己の根抵当権を主張してその侵害による損害賠償を請求するためには、まず、原告において本件山林における根抵当権の設定を被告に対抗し得るに足る右根抵当権の設定登記が必要であるところ、<証拠>によれば、本件山林については、鳥取地方法務局若桜出張所昭和三六年七月一四日受付第一、一一六号原因同年同月一〇日証書貸付、手形貸付契約についての同日根抵当権設定契約、根抵当権者訴外谷口明、元本極度額二七〇万円、利息年一割五分、遅延損害金年三割、債務者大谷武雄なる旨の根抵当権設定登記がある外、前記根抵当権設定契約を窺うに足る登記は認められない。そうして、<証拠>によると、原告は前記認定のとおり大谷に対する債権を担保するため本件山林を含めて根抵当権の設定を受けたが、右設定登記にあたり、債務者大谷より、金融業者である原告の名前を債権者として表示することによつて後日、大谷が銀行方面から融資を受けるについて支障があることを理由に、原告以外の個人の名前を使用されたい旨の要望があつたので、原告もこれを容れ、当時、原告会社の取締役であつた訴外谷口武司の従兄弟にあたる右谷口明の名義をもつて債権者となし、大谷との間に前記貸付並びに根抵当権設定契約による前記根抵当権設定登記をしたことが認められ、これに反する証拠はない。

四、そこで、前項において認定したような根抵当権設定登記の効力について考えてみるに、おおよそ登記が有効であるためには、登記簿上に記載された権利関係と実質上の権利関係とが精密に一致していることを必ずしも要しないが、少なくとも登記簿上に記載された権利関係が実質上の権利関係を公示しているものと客観的にも見得るに足るものでなければならない。すなわち、この意味において登記簿上記載された権利関係と実質上の権利関係との間に権利主体、権利客体、その内容において同一性あることを必要とする。

これを本件についてみるに、前記認定の如く、実質的には、原告と訴外大谷との間において根抵当権設定契約が締結されているにもかかわらず登記簿上においては右根抵当権者の名義を原告とせず、殊更に別に実在する谷口明としているのであり、この両者の間に前記の意味における権利主体の同一性あるものとは到底認められないから、右根抵当権設定登記をもつて、原告の根抵当権の設定を公示するに足るものとはいえない。そうだとすれば、当時、真実の根抵当権者は原告であつたとしても、これが根抵当権につき有効な登記を経由したものとはいえず、原告は当該登記の欠缺を主張し得る第三者にあたる被告に対しては右根抵当権者であることを主張できない筋合である。(中村捷三 海老塚和衛 相瑞一雄)

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